60年以上続いた「大看板」を降ろすことは、空中分解につながりかねないが、ジャニーズ事務所には他とは桁違いのファンクラブの存在がある。新会社の副社長への就任が決まっている井ノ原快彦(47)は、会見で「社名はファンクラブから公募します」と明かした。覚悟の出直しに際してのネーミングを「公募」に委ねることに違和感を覚える人も少なくないだろうが、求心力の大きな部分がファングラブにあることは間違いなく、井ノ原も東山紀之社長(57)もそれを自覚しているのだと思う。
ジャニーズファンクラブの会員数は累計1300万人を超える。内訳は1位の嵐が308万人、2位のSnowManが122万人、3位King&Prinnceが105万人、4位関ジャニ∞が79万人と続く。
多くの所属タレントを取材する機会があったが、誰もが「ありがたい存在」とファンクラブへの感謝の言葉を口にした。コロナ禍の間、直接触れ合う機会がなくなったこともあり、有観客ライブの再開に「力をもらった。無観客とは明らかにパフォーマンスが違ってきた」と、そんな有形無形の実感を明かすタレントも少なくなかった。
9月の会見では「ジャニーズ」の社名存続の意向を示した東山社長は、先日の会見で「それこそが内向き体制と言われて当然のことだと感じておりました」と考えを改めた。
「社名変更は前回の会見でできたはず」が正論なのだろうが、「内向き」と言うには大きすぎるファンクラブという母体が「ジャニーズ」を冠してしることを考えれば、そのためらいも理解できる。
一方で、ファンの「優しさ」への甘えが過ぎれば、飛躍は望めないということを多くの所属タレントが自覚している。舞台や映画でのいわば「他流試合」で、気付きや学びがあったことをうれしそうに明かすタレントも少なくなかった。
そのあたりをもっとも顕著に語っていたのが岡田准一(42)だ。
「声援はものすごくうれしいんですけど、どうしてもそこに甘えちゃうんですよね。だから、単独でやる仕事では目いっぱいがんばりたい。それがファンへのお返しにもなるのだと思う」
ドラマから映画化もされた「SP」(07年~)で、キレのいいアクションを披露した岡田はカリ、ジークンドー、ブラジリアン柔術-とさまざまな格闘技でインストラクターなどの資格を持つまでに至り、主演映画「燃えよ剣」(21年)などの作品では殺陣を担当するまでになっている。
「燃えよ剣」の原田眞人監督は「超一流の武芸者が俳優のふりをしているような人」と、ジャニーズタレントとは思えないような形容をした。
11月末が元V6メンバーの契約更新の節目になっていることもあり、廃業会見の日に岡田が退所を発表し、東山や井ノ原がエールを送ったことに違和感はなかった。